2018/05/26

「Fラン」上等

 「Fラン」というもの言いも、割ともう一般的になってきているのかも知れません。

 もとは予備校以下、受験産業の用語だったはずです。いわゆる偏差値的序列におけるランキングで「ボーダーフリー」と呼ばれていた下位クラス。合格のための入試難易度が偏差値として算出できない、事実上全入に近い一群を称してつけられていた「ボーダーフリー(F)ランク」だったものが、AランクBランク的なものさしと誤読されつつ「Fラン」と使い回されるようになった。このあたり、かの戦争犯罪人たちを分類する「A級」「B級」が、戦争犯罪の質の違いを便宜的に分類した記号だったものが、同じように犯罪の軽重を一直線に評価したものさしとして理解されてしまったことなどとも、どこか似ています。

 大学受験が事実上、かつてのある時期までのような「競争」ではなくなり、浪人してまで志望校をめざす、といった「受験戦争」期の苦難のイメージ自体、もう過去のもの。もちろん、上位難関校をめざす若い衆たちは今もいますし、そのために浪人する層もいるにはいますが、しかしそれはかつての最も競争の激しかった頃、具体的には80年代でしょうか、当時の「大学受験」にまつわっていた切羽詰まったものとはすでに別ものになっています。

 なのに、というか、だからこそ、というか、この「Fラン」というもの言いだけは、便利に使い回されるようになっている。偏差値的な序列の最底辺、勉強的には箸にも棒にもかからない頭の悪い層、といった意味を、そうとはっきり指し示さなくてすむための回避的な、とりあえずは便利なもの言いとして、のようです。

 学生若い衆同士でこの「Fラン」が使われるかというと、実はそうでもない。自分自身のことに直接刺さってくるから、という面もありますが、そういう事情だけでもないらしい。たとえば、好んで使いたがるのはむしろ教員の側のような印象があるのも、何かワケがありそうです。