2018/03/20

講義の数が減っている?


学生になったつもりで、改めてカリキュラムを眺めてみます。あ、これ取ってみたい、聴いてみたい、という授業や講義が、さて、どれくらいあるものか。

何より、以前に比べて講義科目の数が激減しています。おそらくこれは、多くの大学でここ10年内外に起こってきたことでしょう。理由は、とりあえず経費削減。非常勤講師も含めて、大学の開講科目数は人件費に依存しています。昨今の少子化などで経営状況が芳しくなくなってきた時に、経営側は当然、経費を削ることを考える。人件費が最もラクに、少なくとも民間企業でのリストラや解雇首切りなどに比べれば手間をかけずに削れる、それが開講科目の削減だったようで、非常勤や特任の教員に頼っている部分の大きい科目から減らしてゆくことが当然のようにやられてきました。受講者数の少ない科目は開講しない、などというローカルルールが定められて、科目登録が終わった段階でこの科目は開講しません、といった事態も起こってきますが、だからと言って、いまどきの学生若い衆は強くクレームをつけたりはしない。仕方ないよね、で粛々とまた別の科目を登録し直したりして、特に問題になったりはしないのが通例。

単に科目が減っただけでなく、その目指すところが「就職」に特化した組み立てになっている、そんな印象のカリキュラムになっているところは、同業他社をざっと眺めてみても本当に多い。というか、学部学科コースなどによって色合いは違うように見せてはいても、その意図するところというか目指す先はきれいに同じところに向かっている、そんな感じです。そしてこれは、大手の有名どころやいわゆる入学偏差値的に高い大学かそうじゃないかに関わらず、大都市圏であれ地方であれ、どこも基本的に変わらない傾向のように見えます。

 大学へ入って最初の1年2年が「一般教養」課程で、3年になって初めて「専門科目」が取れるようになる、というのが以前の大学の、ということは今の世間の大方がイメージしているような大学のあたりまえ、でした。これが「大学設置基準の大綱化」という、ぶっちゃけ「大学の自由化」政策によって今から20年ほど前、なしくずしに崩されてきて、昨今だとこういう2階建てのカリキュラム構造は、ほぼ姿を消したと言っていいでしょう。3年4年になってようやく大学生らしい専門科目と演習とでがっちり勉強する、というあり方はすでに遠い昔のこと。いや、それどころか、昨今は1年から「初年次教育」という名の、高校までのおさらいと足りない部分の補習みたいな科目が設定され、同時に「キャリア教育」という就職めがけた洗脳課程も待ち受ける。3年からは実際に就活を視野に入れた本番が始まり、4年はもうほぼ就活でつぶされる、というのが昨今の大学と大学生の4年間の概ねルーティンになっています。

 「好きな勉強」「自分の興味や関心に従った学び」といった美辞麗句は、未だどこの大学の宣伝パンフや公式サイトなどに踊っていますが、けれどもそれらでさえも、すでに片隅に追いやられ始めているフシも見え始めている。「実学」という名で、具体的な就職につながるような教育をしなければならない、という流れが近年、表面化してきて、またその流れを世の中自体が何となく承認しているような気配の中、大学とは就職のための勉強をするところ、できればそういう「役に立つ」免許や資格のとれる学校、といった理解の方向に、大きく変わってゆきつつあるようです。

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