2012/02/02

「自立」ということ


 よく、「自立」と言われます。うちの大学でも建学の精神としてこの「自立」があげられている。英語だと、independence=依存しない、寄りかからない、こと。自立、独立、独り立ち。でも、じゃあ具体的にどういう状態? と尋ねられると、案外すっきり答えられない。

 大学での場合、4年間かけて一度ちゃんと「ひとり」になること、がまず必要です。孤立したりひとりぼっち、という意味じゃない。ちゃんときちんと「ひとり」になること。まわりの友だちや仲間と自分とは別のニンゲンである、そのことを自分で思い知る、ということです。

 たいていの新入生は、高校生までのまま大学にやってきます。特に昨今は浪人までして大学に来るような人は少なくなっている。高校生までの集まり方、群れ方がそのまま持ち越されてくるのが普通です。男の子と女の子でも違ってくるのですが、それはひとまず措いておくとして、ひとつ言えることは、そのような高校生以来の集まり方、群れ方から一度離れて「ひとり」になること、が「自立」の兆しだということです。

 人によって違いますが、4年の間のどこかでこれをやっておかないとまずい。それまでいつも一緒にいる、群れてじゃれあっていた仲間から、何となく離れてひとりで行動するようになっているのを見ると、ああ、いいぞいいぞ、とこちらはひそかに喜んでいます。たいていちょっと不機嫌そうな、めんどくさい内面の気配が表情や身振りにも浮かび出てくる。まあ、以前ならば高校生くらいの時期に乗り越えておくべき過程だったんでしょうが、いまどきはそれが大学にまで持ち越されるのが普通になっているようです。

 そんな「ひとり」になる過程をくぐった後に、もう一度仲間と出会い直す。互いに「ひとり」であることを認識した上で、改めて関係を発見してゆく。4年間という時間のありがたさは、そんな手続きも許容してくれる懐の深さ、でもあったりします。

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